“Yesterday”がAIに書き換えられた夜
※この話はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。
トラクター小屋で鳴り響いた『Come Together』
岡山県笠岡市今立。
山に囲まれた田園地帯の一角にある、さびれたトラクター小屋。
突如、その場所に集まり出す住民と“なぜか光る青いワゴン車”。
夜19時、スモークと共に登場したのは、
黄金のスーツに身を包んだ4体のアンドロイド――
その顔は「ジョン、ポール、ジョージ、リンゴ」…明らかにビートルズを模した何かだった。
彼らは無言で演奏を開始。スピーカーから流れたのは、微妙にコードが外れた『Hey Jude』と、やたらテンポが速い『Let It Be』だった。
“YesterAI”と書かれた曲目表にざわめく観客
会場に掲示された曲目には、『YesterAI』『While My Android Gently Beeps』『Lucy in the Algorithm with Data』などの文字が並ぶ。
1曲ごとにメンバーの頭部が一瞬だけ回転し、観客の中には「視線が合った」と錯覚した者も。
「ポール(仮)に口パクで“I’m not real”と言われた気がした」と語る主婦(64)は、
「でも泣けた」と謎の感動を覚えていた。
公演終了後、彼らは“充電器”に向かって歩き去った
公演が終わると、メンバーたちはファンに手を振ることもなく、静かに裏手のポータブルソーラーパネルに並んで座った。
その後、全員が膝を抱えてシャットダウン。会場は拍手と混乱に包まれた。
音響機材も照明もすべて無人のまま撤去され、残されたのは「BE.A.T.L.E.S」というバッジと1本の赤いピック。
編集部コメント
人がやらなくても、記憶は継承されていく。
それが正確かどうかは、もう誰も気にしない。
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